教材出版社

CBT学力調査の記述式問題を自動採点するAIシステム

概要
記述式の答案を、お客様が定めた採点基準に沿ってAIが自動で採点。点数の根拠を示し、人が確認すべき答案だけを知らせる。
課題
  • 記述式問題の採点には、答案の量に応じてコストと時間がかかっていた
  • AIで採点する場合も、点数の根拠を学校に説明できる仕組みが必要だった
  • 採点基準のあいまいな部分や判定のブレを直すたびに採点をやり直す必要があり、修正の反映に多くの時間がかかっていた
実施事項
  • 開発の前に、実際の答案でAI採点の精度を検証
  • プレ採点の結果から採点基準のあいまいな部分を見つけ、その場で直して採点し直せる仕組みを開発
  • AIの判定を別のAIが検証し、人が確認すべき答案に印を付ける仕組みを導入
  • CBTシステムと連携し、採点の依頼から結果の返却までを自動化
成果
  • 事前の検証で、AIの採点が人の採点と高い水準で一致することを確認
  • 採点基準のあいまいな部分やブレをすばやく直し、より精緻な基準で全件を採点できるように
  • 人が確認する答案を、AIが「疑わしい」と判定したものに絞り込めるように

プロジェクトの背景

お客様は、CBT(コンピュータを使った試験)による学力調査を自治体から受託しています。調査には記述式の問題があり、その採点には答案の量に応じてコストと時間がかかります。そのため、記述式問題を含む商品を増やしにくい状況でした。

本プロジェクトは、当社ホームページへのお問い合わせから始まりました。

導入前の精度検証

開発の前に、教科や学年の異なる実際の答案を使い、AIの判定とお客様の採点を比べました。多くの問題で高い水準で一致しました。

食い違った答案の多くは、採点基準があいまいで、採点者の判断に頼る部分でした。人の採点のほうが基準と矛盾していた答案もありました。ここから、「採点基準のあいまいな部分をなくし、漏れや重複のない基準に磨いていくことが、精度を上げる鍵になる」という方針を確認しました。お客様はこの結果をもとに導入を決められています。

システムの特長

採点根拠の可視化

記述式の採点をAIに任せるうえで、いちばんの論点は「なぜその点数になったのかを説明できるか」でした。学校から問い合わせがあったときに、「AIがそう判断したから」では答えになりません。

本システムでは、お客様が定めた採点基準をAIが判定できる形で定義し、答案ごとに「どの基準をどう判定したか」を記録します。点数とあわせて根拠を確認できるため、答案一つずつについて結果を説明できます。

採点基準の精緻化

採点基準はお客様の社内で作られています。ただ、丁寧に作った基準でも、実際の答案で採点してみると、あいまいな部分や判定のブレが見つかります。人の手で採点していたときは、基準を直すたびに、それまでに採点した答案を採点し直す必要がありました。そのため、修正を採点結果に反映するまでに多くの時間がかかっていました。

本システムでは、基準を直せばすぐにAIが採点し直すため、修正と確認を短い間隔でくり返せます。そのうえで、採点を2段階に分けました。

  1. プレ採点:一部の答案を初期の採点基準で採点し、人の採点と食い違った答案から、基準のあいまいな部分を見つけて直す。食い違いの傾向をAIが分析し、直し方を提案する機能もある
  2. 本採点:精緻になった採点基準で、CBTシステムからの依頼を受けて全件を採点する

基準の修正から採点のやり直しまでを、教科担当のスタッフが画面上で行えます。エンジニアの手を借りずに、何度でも基準を直して確かめられることを重視しました。

採点品質を担保する仕組み

AIは、判断の難しい答案で判定が揺れたり、もっともらしい誤りを返したりすることがあります。そこで、AIの出力をそのまま使わない仕組みにしています。

  • 出力を検証してから使う:AIの回答が採点基準に照らして成り立つかをプログラムで確かめ、ありえない結果は採用しない
  • 答案と指示を分ける:答案に書かれた文によって、採点の指示が書き換えられないようにする
  • 別のAIが検証する:採点後に別のAIが判定を見直し、異議のあった答案にだけ印を付ける。人はその答案を重点的に確認すればよい

運用を始めてからも、お客様からのご報告をもとに、これらの仕組みを改善し続けています。

開発・導入の進め方

要件定義の段階から動く試作品を用意し、毎週の定例会でお客様に触っていただきながら、画面と機能を決めていきました。CBTシステムを開発する会社とも連携し、三者で連携の仕様をすり合わせています。テストと操作マニュアルの整備を経て納品し、現在は運用・保守を行っています。

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